06 8月 2018

【特別連載(別冊)】第7回 荒木ーX対談 〜日本の電動化戦略について〜

<ARM Technologies 荒木 以下A>
記事と対談の読者からXさんがホンダについて触れないですねってコメントもらってるんですが、どうでしょう?

<大木 以下X>
こういうところで取り上げるネタないんですよね。

<A>
誰かの役に立つような内容にしたいという気持ちはありますが、もともとこの対談は自己満足ですから。
では、なんか聞いてはいけない感じもしますので、コメントしやすいネタにします。
最近CMで「2030年までに電動化比率3分の2にする」って宣言してますね。しかもPHEVが解だとも言ってますね。

<X>
2016年に八郷社長はEV比率も言ってるんですよね。興味があれば調べてみてください。

<A>
あ、本当ですね。この2016年2月の記事で、八郷社長が2030年までに電動化比率2/3を目指すって宣言してますね。

昨年秋ころから欧州を発端としてこのような宣言が相次いで、今じゃ特別感は無いのですが、その発端の1年以上も前に宣言していたのですね。

<X>
この先、どこかで世代交代があると思うので、その際は宣言したことに対してどれだけ行動したか分析してみましょう。

<A>
僕らには計り知れない色々な事情があっての宣言でしょう・・・。
それまで、この対談続いてればいいですね。

ちょっと逸れるんですが、20年ぐらい前に自動車業界がFC推しだったじゃないですか?
その時の予測ってどこかにまとまった形の資料はないですか?

<X>
えっ奇遇ですね。私も今探しているんですがなかなか見つかんないんですよね。
FCを否定するとかそういうことが目的じゃなくて、予想通りにいかなった理由をきちんとまとめておきたいんです。どういう仮定をおいていてどう予測していたのか、なにが想定外で解決できなかった問題はなんなのか、とか。次に何か興す時に必ず役に立つと思うので。

<A>
あのときの予測と現状が解離していることに対する振り返りも見つからないんですよね。

<X>
そうなんですよね。担当者が3年ぐらいで変わっていくので、大きなテーマになればその期間でやりきれないし、担当者は自分の成果を主張しなきゃいけないのでどうしてもいいことだけ言ってまとめちゃうんだと思うんですよね。
途中では失敗してうまくいかなかったとしても、ちゃんと理由を明確にして、修正しながら成功するまでチャレンジしていくことが国プロなんかは大事だと思ってます。スタート時点の大義に問題あったらどうしようもありませんが。

<A>
これ読んでくださっている方で情報お持ちの方、ぜひ提供をお願いします。

<A>
入手できたら、Xさん、振り返りしましょう。

同様に、今まさに自動車新時代戦略会議でこういうのが議論されていたようですね。これどう思いますか?経産省が発表した2050年までに電動化比率100%というやつです。
中身ってパッとみ、結構ツッコミどころ満載のように思えますがどうですか?

<X>
経済産業省が日本の産業支えている自動車業界とタッグを組むので、経済的に世界で戦っていく内容になっていくことを期待したいんですが、なんか環境省が作った方針のような感じですね。
環境に配慮することと経済活動を両立しなければならないですからね。環境優先で経済活動が破綻したら元も子もないですよね。

<A>
以前からXさんの話を聞いていると世の中の電動化に対して否定的とも感じられるような発言がところどころあるように感じるんですが。

<X>
そんなことないですよ。電動化は確実に進むと思ってますし、それによってお客様に新しい価値を提供できると思っています。今それをチャンスだと思って活動しているわけですし。
ただ、エンジンがなくなるとかそんなことはなくて、エンジンと電動が適材適所で棲み分けたり融合して商品・サービスの幅が広がり、お客様の選択肢が増えていくと考えています。

<A>
そうなると色々ビジネスチャンスが生まれてきそうですね。

<X>
と思ってるんですが、まーそんなに甘くないので地道に精進しながらチャレンジして行きます。

<A>
Xさんの話は置いといて、OEM目線だとこの流れはどう考えればいいんでしょうね。

<X>
桁違いな莫大な資金を持っているので行動すればこのチャンスを一番ものにできる立場にいるのは間違えないですね。
ただ、エンジンビジネスと比較しちゃうと、じゃ電動車大量に作りましょう!CASE始めましょう!って感じに今すぐ行動できないですね。

<A>
どうしてですか?

<X>
ここはすごく面白いポイントなんです。視点を変えたり視野を広げたりすると。
このサイトは電池関係者が多いので電池視点説明してみます。
よくWhあたりの単価を耳にすることがあると思います。¥10/Whが目標だ、国プロ目標は¥5/Whだとか。¥5/Whは色々言いたいけどここではやめます。

<A>
そうしましょう。自由に話させるとXさんの話は私が意図していない方に流れてしまうので。

<X>
なんか今日は冷たいですね。何かあったんですか?
もしかして、前回の対談で頑張ったオチが不評だったとか?

<A>
それは触れないで下さい。
そもそも、その前のXさんの”振り”が良くなかった・・・・

<X>
はい。じゃ、話を戻します。
リーフが40kWh分の電池を搭載しています。電池価格が¥10/Whだとしても、電池代だけで40万円です。この価格はほとんどのガソリン車のエンジン価格を上回っています。電池はパック化するのにさらにコストがかかります。詳細は省きますが、トランスミッションやモーターなどのコストを足したり差し引きして計算すると、EVはガソリン車で上乗せしていた利益を食いつぶしても足りないぐらいなコストアップになっちゃいます。
コストではなく価格なので正確な比較でありませんが、リーフは一番安いモデルで300万円です。ノートのガソリン車は140万円です。走行性能や装備なども異なるので比較するのは極端すぎるかもしれませんが、この価格差を埋めるような魅力を提供していかないと、規模の大きなOEMはEVを主軸にビジネスしていけません。
もう少し正確な数字で比較すると、HEVがわかりやすいかもしれないですね。ノートのハイブリッド車は190万円です。電池搭載量はリーフの20分の1以下なので、電池価格の比率はEVに比べ低くなっているのでHEV化で50万円上乗せしていると言った方がいいかもしれませんね。まだかなり荒いですが。
でも日産うまいですね。50万も上乗せしてもちゃんと売れているようなので。
単純な比較はできませんが、HP上の価格見ているとコンパクトカーのHEV化でトヨタ・ホンダがだいたい30万上乗せしています。

<A>
日産のノートは、電動化の加速性能やワンペダル、とかが、電動化の価格差を埋める価値として、お客さんに理解してもらったということですね。低燃費なので維持費を含めるといつか総コストが安くなりますよ、というのもあるかもしれませんが。
また、話がずれました。ただ今回は悪くないずれ方ですね。もうすこし聞きたいことありますがEVに話を戻しましょう。

<X>
お褒めありがとうございます。HEVも面白いネタいっぱいあるので、別途。

荒木さんの指摘は面白いところついてます。ワンぺダルも別にガソリン車でもできますが電動車で先出しして付加価値を出しているんだと思います。 

あとは、電動車は先ほどやったような電動化でいくら価格が上がったとかお客様に知られるとビジネスしにくくなるので、電動車専用ブランド出して行くと思います。すでに欧米はそれが顕著です。 

さらに、航続距離を伸ばそうとすればするほどEVはコスト的に不利になります。ガソリン車はタンクを大きくすればいいですが、EVは単価の高い電池の搭載量を増やすことになるからです。 

<A>
電動車販売を拡大していくためには、量を出して電池を含め安くしていくのが常套手段ですが、電池メーカーだけでなく部材メーカーもこの価格差を埋めていくことを一緒に考えていかないとOEMだけでは難しそうですね。

<X>
OEM視点でいうと、電池を買ってくるということが大きな変化をもたらします。エンジンは自社もしくはグループ会社で作っていました。それにより利益率を高められていました。それができなくなります。また、すでに投資している雇用や設備が不要になり利益を圧迫してしまいます。

<A>
とはいえ、これだけ周囲がEVシフト、と言っていると何もしないわけにもいかないですしね。

<X>
自動車メーカーにいた頃、電動化をビジネスチャンスだとおっしゃる社外のお客様に聞いていた質問があります。

<A>
なんですか?

<X>
EVを所有されていますか?もしくは購買される意欲はありますか?です。

<A>
どうでした?

<X>
私の接した範囲では持っている人もいませんでしたし、買いたいという人もいませんでした。
やっぱり価格が問題のようでした。あとは、ガソリン車を上回る決定的な魅力が現時点でないことです。

<A>
その魅力を出すために各OEMが今がんばってるってところですね。

<X>
そうですね。どこの会社も知恵だせって言われてるんじゃないでしょうか。

<A>
出てくるんでしょうか?

<X>
今のままだと難しいかもしれないですね。
この停滞感を吹き飛ばしてくれるようなきっかけが、冒頭に取り上げた経産省の取り組みになっていったらいいですね。

<A>
ちなみに我々はそこに関与することは間違いなく無いですが、例えばXさんが経産省に呼ばれて”そんなあーだこーだ外野から言うんだったら、どうすればいいか提案しろ!”ってチャンスもらえたら、何提案しますか?

<X>
各国が定めている電動化のルールに日本政府がロビー活動なりで介入していって日本企業に有利な環境作りすることを提案します。

<A>
ちょっと意味がわからないんですけど・・・
どういうことですか?

<X>
他の国よりかなり前から電動化とか電池の基礎研究に投資して基盤を作ってきたのは、日本企業であったり、それを支えてくれた国のおかげだと思うんですね。
でも、その努力の恩恵が受けられていない気がします。
最近では、外国企業から、基礎研究するなら日本、ビジネスは日本以外みたいな意見を聞きます。
前もって投資してきたのにそれを外国に活用されていて、すごく費用対効果が悪い気がしています。

あとは、tier1周辺ビジネスの強化とエンジンビジネスの位置付けの明確化です。後者は正確にいうとモビリティビジネスの仕切り直しですね。自動車って枠組みで仕切るのはやめた方がいいですね。企業側の都合じゃなくて、購入する側、利用する側の視点で分類して考えて行くべきだと思っています。

<A>
この課題を解決するためには、具体的にはどんなアクションが必要ですか?

<X>
提案ではないのですが、新しい枠組みを作って行くときのやり方だと中国のように政府主導で方針決めてそれに追随してくる企業を支援するというのが一つのやり方だと思います。ただこのやり方は、日本のような性質を持った国では難しいかもしれないですね。
やること決まれば誰かがリーダーシップ取ってやるのは日本は得意ですが、何をやるかを決めるのが政府も企業も苦手なような気がします。今回の経産省のもどこか海外の動向に押されてやっている感が否めません。
賛否両論があるかもしれませんが、個人的には中国とがっつり組んじゃうってのが面白いかなと思っています。なので、上記のような提案してみました。OEMは嫌がるかもしれませんがそれ以外のところにはビジネスチャンスが生まれると思います。
それに対して、材料や電池メーカなどが企業の枠超えて連携して行くっていうのも面白いんじゃないかなと考えています。
トランプさんとは逆行しちゃいますが、国同士の競争ではなくて共創が個人的にはこらから重要だと思っています。

<A>
いろいろな情報が錯綜して、判断は難しいのでしょうね。ただ、経産省は、明確に全固体をオールジャパンで推進するというような判断を下したように見受けられますが。

中国とがっつり組む、という提案は面白いですね。彼らと競うのではなく、不足しているものを互いに補い合えば、世界中どこにも負けない気がします。
もう少しこのあたり深掘りしたい気もしますが、またの機会にしましょう。

<X>
ちなみに荒木さんは、委員になったら何提案します?

<A>
エネルギー密度の軸だけでなく、もっといろんな車載用電池があっていいのではないでしょうか?
例えば、航続距離は現状維持だけど、安くて、1分で充電できるような、使い勝手の良い電池とかへの取り組みも重要です。
と、それらしいことを言って、極秘で弊社が取り組んでいる”レドックスフロー電池としては超高エネルギー密度の液体電池”の開発に補助金出しますね。
ついでに補助金を3等分して、パイプ椅子ではなく、革張りの椅子にしてもらい、奈良を応援します。
そして、自分の関連会社に補助金を出していることが世間にバレて、叩かれると思います。

<X>
7/24に経産省が発表した自動車新時代戦略会議中間整理(案)をベースに話を広げてみましたが、もしかしたら私勘違いしてたかもしれないです。
これって日本政府が海外に対して公言したCO2削減目標を達成する手段の一環、ということであって、これに関わる企業の利益を考えているのもじゃないですね。多分。

<A>
自分のことは自分でなんとかしろってことですね。

<X>
参考になるかわかりませんが、ホンダの技術者は結構ビジネスと技術をつなげて話せる人多いですよ。周りに知り合いいたら議論してみるのは面白いと思います。

<A>
それって言い方変えるとあの会社は・・・

<X>
やめましょう。