20 8月 2018

【特別連載(別冊)】第8回 荒木ーX対談 〜日経オートモーティブの特集”トヨタの全固体電池”について〜

<ARMTechnologies荒木 以下A>
8月30日の全固体のセミナーの準備どうですか?

<大木 以下X>
参加者の方は、戦略を考えるような立場の人が多いようなので、そのような業務に役に立つような内容にしようと考えています。現行電池と全固体電池のちゃんとした比較が世の中の情報としてあまりないので、そういうようなところを重点的に情報提供して議論できるように。
参加者の方々が自分たちの立場で全固体を判断できるようになっていただけるようにしたいですね。一方的な情報が多いですからね。

<A>
タイミングよく日経オートモーティブで”トヨタの全固体電池”っていう記事ありましたね。
読みました?

<X>
多方面からコメント欲しいと言われて読んでみました。

<A>
どうですか?

<X>
全固体じゃないんですが一番引っかかったのがEVを普及させるために価格の話のところですね。
ガソリン車とのTCOの比較のところなんですが、リーフ並の40kWh積んだEVであれば2万キロ年間走れば優位になるって言ってます。
ちょっと古い資料になるんですが、2004年で乗用車の平均年間走行距離って1万キロちょっとなんですよね。
本文からの情報だけだとなんとも言えないんですが、この雑誌の情報だけだとEVは費用対効果悪いですよって言ってるようなもんですよね。
なので、見出しの「EVが競争力発揮」っていうのは経済紙としてはお粗末のような気がします。

<A>
ここで設定しているガソリン価格が倍になってトントンですね。ただ、そのガソリン価格には税金が入ってますからね。正確な表現ではないですよね。

<X>
話が少し変わるんですが、EVを普及させるならその税金視点でもちゃんと考えないといけないと思ってるんですが、あんまり世の中でそういう情報聞かないんですよね。

<A>
どういうことですか?

<X>
荒木さんが指摘された通りガソリンを買うと税金取られますよね?
EVであったりPHEVが普及していくとこの税金が減ります。その減額分をどこかから補填していかないといけないわけですが、そこの議論が手薄で曖昧な気がします。

<A>
昨日、イタリアの道路の事故を介して、「花の建設、涙の保全」って言葉を知りました。もしかしたら、これに近いことが電動化でも起きそうですね。普及した政府官僚関係者だけが美味しい思いして、引き継いだ人が辛い思いする。

<X>
そうかもしれないですね。
経済紙なんかは先読みをして、ぜひこういうところを政府に向けて突っついていただきたいんですが、全固体みたいな流行りを取り上げるだけじゃなくて。

<A>
安倍さんに「フェイクニュース」って言われるのが怖いんじゃないでしょうか。

<X>
日本はイタリアやアメリカのような国じゃないと思うので、政府官僚は表面上の情報に流されないで国民の長期的な安全と幸せを考えていってほしいです。

あとはパックとか電池価格に関しても、この雑誌の中では目標で語ってますよね。
経済紙ならこの価格目標が本当に達成可能かどうかを語って欲しいです。
私が知っている限りでは、この価格であればガソリン車に対して優位性が出る出ないで計算されたもので、実現できるかどうか検証されたものではありません。

<A>
多分、情報収取だけで検証とかしてないんでしょうね。

<X>
目標を設定するのは重要ですが、それを達成するための課題を明確にしないといけません。
こういう電池の価格の話はここ1、2年で出てきた話じゃないので、経済の専門誌であればもう少し突っ込んだ話を含めて議論して欲しいです。
少なくとも、コストの現場ではこの雑誌で使用している数字は補助金とか出ないと夢物語だと思っていると思います。

<A>
補助金使って、しかも数兆円規模の税収がなくなる電動化ってどうなんでしょうね。

<X>
個人的には色々思うところはありますが、自分たちの子孫のために地球環境を保全していく義務が我々にあり、それがお金で解決できれば悪いことじゃないと思います。

<A>
ただ、多くの消費者は現時点の費用対効果で考えてしまうので、政府が仕組みつくりをしてかないとダメですね。
タバコみたいに悪影響のあるエミッションをするガソリンの税金を上げていくんでしょうね。

<X>
そうですね。
ただ、取れるところからとる手法を用いていたら、日本みたいに内需の成長が芳しくないところではきついですよね。何か成長産業を育てる対応をしないといけないです。

<A>
電動車に関しては中国が先手を打っていますね。ただ、技術力は日本の方が上だと思います。
なので、前回Xさんが提唱していた中国と連携していくっていうのは面白いかもしれないですね。

<X>
政府と違って日本企業は優秀なので自分たちで動いていくので大丈夫だと思いますが、日本自体の成長はこのままでは期待できないですね。このままでは企業は内部留保を貯める構造は変わらないですね。

<A>
我々がこの話してもしょうがないので、電池・電動化の話に戻しましょう。
他には記事の中身で気になったところありますか?

<X>
他は技術的中身なので、世の中で言われている情報を詰め込んだって感じですね。
イノベーション起こそうと技術革新にチャレンジしていくの重要だと思うので、この記事によって研究がさらに盛んになっていくことを期待したいですね。

<A>
読者はXさんにバッサリ切ってもらうの期待しているはずですが、そんな大人なこと言ってていいんですか?

<X>
セミナーの準備してて、全固体に対してもいろんな立場の人がいることがわかってきて、一様なこと手短に表現する難しさを知っちゃいました。

<A>
らしくないですね。そんなんでは生きてけないですよ!

<X>
じゃ、NEDOの全固体の目標値のところ突っ込みます。
昔から気になっていたんですが、電気化学の業界が出す目標値とかロードマップの数値は根拠が乏しいものが多すぎると感じていました。仮定を置いてでもいいので設計できているのか疑っちゃいます。
国が設定した目標値はかなりの責任を追うものになると思います。税金を投入する基準にもなるので。

<A>
なんかいい感じになってきましたね。

<X>
目標値が、電池のエネ密が800Wh/Lでパックエネ密600Wh/Lとあります。
電池エネ密がどの程度いくかはチャレンジ要素でなんとも言えませんが、目標が達成できるとします。
パック化効率が75%になるということですが、これを試算した人はOEM関係者だと思いますが、その方は全固体電池ができた際にはその目標値を達成できる責任を負えるのでしょうか?
設計はOEMが一番得意なところで絶対的な責任を負えるはずです。電池の中身はわからなくても。
これが実現できる根拠として冷却機構がなくなるからだと説明しています。冷却や加温がなくなるかどうかは電池のチャレンジ要素だとしてうまくいくとします。それでもかなりチャレンジングな数値だと思います。
推測ですが、モジュールの概念を無くすような電池の大型化や生産性を無視したような内部構造を設定していると思います。
そのような仮定をするなとは言いません。ただ、そのような仮定をしているのであれば表に出すべきです。
誤解を与えるのを避けたりハードルの高さを共有するのもありますが、将来設定した仮定を実現するために技術開発をしなければならないです。しかも電池関係者で対応できない技術要素です。多くの方の協力が必要なはずですし。

<A>
調子出てきましたね。大人なXさんはつまんないですよ。
この調子で全固体の技術中身についてもお願いします。

<X>
そこは、やめときます。
さっき言いましたように、この記事は専門家でない方が情報収集してまとめたものです。現行のLIBの技術進化について理解していませんし、記事にしている全固体技術が何と比較してコメントしているのか不明確です。これに対して、色々言っても水掛け論になってしまうので。

<A>
つまんないですね。

<X>
あえていうのであれば、急速充電のところですね。
記事でも適当に書いていますが、現行のLIBで急速充電ができないわけではありません。商品性・耐久性を考えると制限がある、というのが正確な表現です。
全固体の商品性を判断できる耐久試験を私はみたことがありません。ですので、全固体が商品性を踏まえて急速充電できる電池と結論つけるのはまだ早いのではと思っています。
やることが無駄という意味ではなくて、研究開発の現場がチャレンジして検証するのは大事だと思ってますよ。

<A>
そこらへんを判断するのがLIBTEC2の本来の目的のような気もしますね。世の中ではものになることで盛り上がっていますが。

<X>
そうかもしれないですね。検証することだけを目的にしては、国プロ始めることできないので。

<A>
そうだとしたら、もっと有効なお金の使い道あるような気もしますが。

<X>
そうですね。全固体も手段の一つなので、全固体で狙っている性能を実現できる他の技術もあるはずなので、そっちにもお金回して欲しいですね。
ただ、大企業出て思ったのが、国の予算って、本当に大企業とか大物のバックアップがないと獲得できないですね。

<A>
大企業なんて金持ちなんだから、国の補助なんてなくてもいいと思うんですがね。補助金もらって内部留保を増やすのはどうかと常々思っています。

日経オートモーティブはXさんに記事を書いてもらったらいいんじゃないですかね?少なくともXさんに切られることはないですから。
ただ、その際は、僕が責任をもってバッサリ切りますよ。

<X>
日経さん、オファーお待ちしてます。