23 7月 2018

【特別連載(別冊)】第6回 荒木ーX対談 〜佐吉電池について〜

<ARM荒木 以下A>
大木先生!佐吉電池について教えてください。

<大木 以下X>
え?どうしたんですか?突然。しかも、いやらしい名称使って。

<A>
よく聞く佐吉電池とやらに挑戦してみようと思いまして。なんか凄い電池とは聞きますが、一体どのようなものか、暇な時間に本気で考えてみようと思いまして。。。

<X>
本気なのか遊びなのかわかりませんね。
ただ、このネタ面白そうですね。手段と目的、時代背景みないなこと考える上で。

<A>
どういうことかわかりませんが、とりあえず質問続けようと思います。
具体的に何か定義あるんですか?

<X>
以下のHP参考にしてもらうとわかりますが、長距離走行を実現できる電池って以外は特に縛りはありません。
https://www.toyota.co.jp/jpn/company/history/75years/text/taking_on_the_automotive_business/chapter1/section1/item6_a.html

ここには書いてありませんが、私がトヨタにいた時は日本からアメリカまでの距離を充電しないで走行できる車を実現する電池って言われていたような記憶があります。
東京からロサンゼルスまで約9,000kmなので今市場に出ているEVの20倍くらいのAERを実現しないといけないってことですね。
現状、EVのパックエネルギー密度が200Wh/Lいかないぐらいで電池単体が500Wh/Lなので、よくロードマップで佐吉電池のエネルギー密度が10,000Wh/Lぐらいに設定されているじゃないでしょうか。

<A>
「100馬力で36時間持続運転でき、重さ60貫(225キログラム)、容積10立方尺(280リットル)以内」
https://www.nikkei.com/article/DGXNASGG2102F_Y0A720C1I00000/
みたいに出ているのですが。
1馬力が735.5Wとすると、100馬力で73,550W。これを36時間ということは2647.8kWh。2.6MWh!!。
エネ密は9.5kWh/Lもしくは11.8kWh/kgですね。
あ、ちょうど10,000Wh/Lですね。

<X>
本当ですね。そっちの方がロジカルですね。
BOLTのパック体積が285Lなので、その当時も今のようなEVをイメージしていたのかもしれませんね。
ただ、重量の方、乖離が大きいですね。
BOLTのパック重量は435kgなので目標値の倍もオーバーしてますね。
もちろん、エネルギー密度は言うまでもありませんが。

<A>
今の電池は、到底佐吉電池に及ばないのはわかりましたが、特に重量エネルギー密度の方が、圧倒的に乖離が大きいですね。
なので、国プロなんかは重量エネルギー密度を目標にしているのかもしれないですね。

<X>
そうですね。
とにかく軽い電池を作ろうと言うのが国の方針なのかもしれないですね。
佐吉さんは、体積と重量両方主張しているのに、片っぽしか記載しないのをよく目にしますね。
都合のいいところしか意図的に見せてない、なんてことになっていないこと祈りたいですね。

<A>
でも、これってトヨタの昔の人が設定した目標で、国がこれを頼りにして、他社もこの方針に近いものに乗っかるって・・・。
時代背景も違いますし・・・。

<X>
そこです。今回主張したかったところの一つは。
前述のトヨタのHP
https://www.toyota.co.jp/jpn/company/history/75years/text/taking_on_the_automotive_business/chapter1/section1/item6_a.html
のところにも書いてありますが、100年近く前にアメリカが当時世界一周を達成されたのに触発されて打ち立てた目標です。そこから時代は進み、佐吉さんが想定出来なかったであろう技術が出てきて、世の中の価値観が変わってきています。
その検証がされた上で、この目標を掲げているのであれば問題ないと思うんですが、そうなっているんでしょうかね?

<A>
確かに。ただ、いつの時代であれ、これができれば誰も文句は言えないし凄いと思いますが。。。
NEDOとか国の関係者に聞いてみたいですね。

<X>
文句は出ないかもしれませんが、日本の競争力増強して行くことが目的だとしたら費用対効果が必ずしもいいとは言えないといことはあると思います。
ちょっと言い過ぎかもしれませんが、トヨタ自身も佐吉電池の価値にそぐわないこと言っているんですよね。
第3回の投稿記事に載せたトヨタのロードマップでは、EVはAERの短いところを狙っているって言っているんですよね。佐吉電池自体の価値はAERを長くするためのものなので、ちょっと矛盾してきますよね。
もちろん高エネルギー密度の電池ができればAERの短いところでも価値があるのは間違いないですが。
あとは、現状の技術だとこうなるけど、佐吉電池ができれば世界が変わるってことかもしれませんが。
そういう議論ってされているのかもしれませんが、世に出てこないので多くの人が迷っちゃうかもしれないですね。

<A>
Xさんはそこらへんわかってるんじゃないですか?機密なんですか?

<X>
機密じゃないですよ。
大体は理解できていますが、トヨタ独特の思想とかが理解できてない人には説明は難しいですね。ホンダでも説明するのに苦労しましたし。
その文化というか思想が、トヨタの強みでもあり、これから弱みになって行くとも思ってます。

<A>
そこらへんの思想というか、背景の考察ってすごく重要だと思うんですね。
今の技術から予想される目標も大事ですが、こんな目標もあってもいいとはおもいますが。
そういうことを理解しないで突き進むと無駄が多くなっちゃうということですね。

<X>
私もそう思います。
国プロなんかでも、中身の研究自体も重要ですが、それをなぜやっているのかって根拠をもっと明確にして欲しいですね。

話を少し戻します。
大正、昭和頭は、どうしても考え方に戦争が絡んじゃったと思うんですよね。
ダグラス機の結果を知って、機織り機で財を成した佐吉さんは日本国の危機を感じたんじゃないでしょうか?
太平洋戦争の敗因はそもそも国力の差だと思いますが、戦争の戦術が陸海から空に変わったことについてけなかったなんていう人もいますし、そういうところに佐吉さんは危惧したんじゃないかなと思います。

<A>
多少、妄想が入っていると思いますが、Xさんが言いたいのはそういう時代背景で出てきた目標をそのまま今に置き換えるのでいいのかってことを問題提起したいわけですね?

<X>
そうです。
そういうことを考えずにやっても何らかの価値があることは間違いないですが、やらなきゃいけないことの優先順は変わってくると思うんですよね。
トヨタ自体でやってる分には株主が文句言わなければいいと思いますが、国の税金を使うんなら曖昧にしないで議論しないと、と思います。

<A>
それって参画している企業であったり、国側の問題ですよね。

<X>
そうですね。
トヨタは本気でものにしたいと思って社内では取り組んでいるはずなので。それで自社だけでは厳しいので国の力を借りようって思想だと思います。

<A>
Xさん、悪いですね(笑)。
ま、その通りですね。
そういう内部の議論が公開されないと、製品じゃなくて電池、もしかしたら材料をやりたい人たちの理由に佐吉電池が利用されているように思えちゃいますね。

Xさんが冒頭で言ってた「時代背景を」みたいな事言ってたのはそういう事なんですね。
では、もう一方の「目的と手段」ってどういう事ですか?

<X>
よく手段が目的にすり替わっていることを指摘するのにいいかなと思いました。あとはそもそも佐吉電池っ て・・・

<A>
佐吉さんの目的はアメリカまでの距離を充電なしで走行できる車を作りたかった。その手段として高エネルギー密度の電池が欲しかった。
本来トヨタは長距離を走れる車を作るのが目標なのに、いつの間にか佐吉電池を作ることが目的になっているってことですか?

<X>
その通りです。

<A>
話していると何となくXさんの思想がわかってきちゃいました。

<X>
佐吉電池を考えることは間違いなく重要だと思います。ただ、それは手段の一つでしかないですからね。
車メーカーとしてはシステム自体の革新とかそういう方がもっと重要だと思います。
電池だけに技術の進化の役割を追わせるのではなく、車両全体で考えて行くべきだと思います。
この前のNEDOの全固体のロードマップなんか電池やるんじゃなくて電池以外の部分の軽量化の方がインパクトあるって言っているようなものですからね。

<A>
じゃ今度、そのロードマップの読み解きやりましょう。

<X>
そうですね。荒いかもしれませんがやってみましょう。

あとは、根本的なところでいうと「なんらかのビジネスをするために固体電池・佐吉電池が必要」というロジックでなけれなならないのに、どこか「固体電池・佐吉電池を使ったビジネス展開」をするって雰囲気があるのが気になります。
最近、各社の株主から「固体電池をやれ」とか「電動化に投資しろ」みたいな意見が多いようです。まさに手段を主張されていて目的が不在のような気がします。それらをやることは重要だと思うので否定しません。
ただ、目的・目標を設定しないで手段だけ進めると無駄が多くなってしまうと思います。

<A>
いつもの調子でXさんに引っ張られましたが、そもそも聞きたかったことに戻します。
そもそも10,000Wh/Lの電池って現状の技術では現実味ないですよね。

<X>
そうですね。
ガソリン自体のエネルギーが約9,300Wh/Lです。ガソリンタンクを極端に大きくしてエンジンや補機の体積無視できるぐらいにしたとしても、ハイブリット化したりしてようやく熱効率40%程度なので、どうやっても現状技術の延長では達成できないですよね。現状世に出ている研究レベルの電池が実現したとしてもEVでは困難なのはいうまでもないです。

<A>
じゃ、考えないといけないですよね。どうしましょうか?

<X>
今はどうかわかりませんが、私が在籍していた時、トヨタでは本気で考えてましたよ。
例えば、イオンを移動させたり化学反応や燃焼反応を利用したんじゃ上記のように絶対無理なので、光を利用したらどうかとか。震災後はやりにくくなってしまいましたが、原発を小型化してとかも本気で考えてた時期ありましたよ。常温核融合なんかもやっていましたね。

<A>
いいんですか?そんなこと言っちゃって?

ただ、流石ですね。
じゃあ、無理っぽいとみんな思っているようですから僕がやってみようと思います。諦めたらそこで終わりですから。今はどの程度無理なのか、どんな技術があればできるのか、をまずはこの対談で、少しずつ考えていきたいと思います。
多分、普通のアプローチでは無理なんで、とんでもないアプローチをしてみます。

<X>
ハードル上げましたね。
ただ、そういうのが重要だと思っています。
達成する手段を二次電池の延長で考えるのではなく、ほかの手段も選択肢に入れて考えて行くことで思いもよらなかった結果を導くことがあると思います。
個人的見解になりますが、そういうことにチャレンジして行くことが研究者の役目じゃないんじゃないかなと考えています。

<A>
見方を変えるという意味では、トヨタは、佐吉電池の本命はリチウムイオン電池ではなく、水素燃料電池なのではないでしょうか?

<X>
トヨタが出している製品の住み分けの絵から考えるとそうとも読めますね。
佐吉さんは「二次電池」とは言ってないですからね。「蓄電装置」なので燃料電池でもいいかもしれないですね。
燃料電池の課題から色々考えてみたら、面白い策出るかもしれないですね。
例えば、気体じゃなくて液体でできないかとか。

<A>
レドックスフロー電池ですね。僕も広義の燃料電池に興味を持って、ライフワークにしています。水素燃料電池のような気体は圧縮すればタンクのエネルギー密度は上がるのですが、発電する際には活性物質の密度が低い気体は、電流密度を大きくできません。発電する際のことや、セルスタックの小型化を考えると、パック全体として液体の燃料電池(レドックスフロー電池)の方が有利なんじゃないかと思って取り組んでいます。僕が取り組んでいるのはまだ佐吉電池にはほど遠いですが。。
色々なアプローチが必要ですね。

<X>
やりましょう。
ところで、そもそもなんで佐吉さん、電池にこだわったんでしょうね?

<A>
たぶん、ラッパーだったんだと思います。

<X>

<A>
陰を踏んだんじゃないでしょうか?
サ・キ・チ
デ・ン・チ
Oh Yeah!