04 6月

【特別連載(別冊)】第3回 荒木ーX対談 〜中国、資源、POST-LIB〜

「第3回 荒木-X 対談」

<荒木:以下A>
先日、CATLの事務所が日本にできて、これから欧米に進出していくんですよね。
なんでCATLってこんなに活発で、自動車メーカーに人気あるんですかね。

<X>
なんでなんでしょうかね。
価格・性能・調達安定性の期待値のバランスがいいことと、ホワイトリストに代表される中国政府の政策に振り回されない可能性が高いことが、選択につながっているんでしょうね。

<A>
ATLの技術や知見もあるだろうし、工場の投資を見ていたら未来感じますよね。

<X>
大きな経営ミスがなければ、実績を後押しに競争力も一層増し、安定感出ていくでしょうね。

<A>
懸念事項ないんですか?

<X>
市場の話じゃなくて、技術の話で良いですよね?

<A>
そうです。

<X>
車を作るだけだったら問題ないと思いますが、車両性能など踏まえて競争力ある電池なのかはまだ不明ですね。
ただ、中国のあの活力なので、だめだとわかったら素早く行動してちゃんと修正していくでしょうね。

<A>
1社に偏れば、電池ってコモディティー化加速されますよね。
自動車メーカーは技術的には何で差別化していくんですか?

<X>
それが悩みどころですね。
電池に限ったことでなく、電動部品の多くはそうなる可能性を秘めていますので、走行性能での差別化って難しくなっていきます。
HEVでもPHEVでもエンジン積んでれば個性出しようがあるんですがね。

<A>
“いや〜この回転数でこのトルクだしてきたか〜”みたいな事ですよね?
でも、少なくとも僕の周りでは聞いたことありません。
電動車とかエンジン車を区別したような話ではなくて、引っくるめてすでに車自体がコモディティー化しちゃってるんじゃないでしょうか?

<X>
その通りだと思います。
私が主張したエンジン積めば差別化出来るとか言っているのも、多くのお客さまにとっては大した差ではないのかもしれないです。技術者としてのこだわりが必ずしも消費者の要望とはリンクしていない現状は否定出来ません。
敢えて肯定的に言えば、第1回の記事で触れたように政治的な理由で電動車を作るのじゃなくて、技術的に新しいものを生み出して新しい価値をお客さまに提供しようと足掻いているって感じでしょうか。

<A>
そうですね。技術者はあがいて新しいもの生み出す。一方でビジネスの判断はまた別の次元ですしね。

もうひとつ中国についてです。
トランスミッションやエンジンの技術では日本に追いつけないから電動化を推進するって言われていたりもしますが、僕は違うんじゃないかって思います。

<X>
そんな事言われてるんですね。
といいますと?

<A>
日本人をはじめ、世界の電池技術者を集めて、ノウハウだらけの電池の大量生産もできています。燃えたりもしていますが、事実として、売れています。利益を出しています。
同じことをエンジンやトランスミッションでできないとは思えないのです。彼らが技術が追いつかないから諦めるなんてことするとは思えないのですが。。。

<X>
ということは、これに対する新しい荒木説を持っているということですよね?

<A>
はい。
日本のエンジン技術者は、日本への忠誠心が高くて中国へ行かない説。

<X>
でも、欧米企業には流れてますよ。
もしかして、日本人自体をディスろうとしてます?
例の英語教育理論も展開しますか?

<A>
・・・・
というのは冗談で、エンジン技術を向上させて今の自動車産業に一石を投じた場合と、電動化した場合とで、全体での国益が電動化の方が高いと判断したのだと思っています。
エンジンやトランスミッションの技術を高めたところで、自国の自動車産業が活発化するだけです。しかも既存の世界の市場と戦わなければないりません。だけといっても、それだけでも十分大規模ですが、電動化した際には、自動車産業以外のところでもビジネスができ、さらに大きな国益へつながると考えたのではないでしょうか?

<X>
その指摘は共感出来ます。
中国が次にやりたいのは技術で世界をリードするような産業のイニシアティブ取ることですよね。それがEV
って事ですよね。
その背景には、エネルギー政策や環境問題なども絡んでいますね。

<A>
今でこそ皆、車両電動化が進めば資源が不足する、と言っていますが、皆がこれに気がついたときには、すでに資源を抑えにかかっていました。コバルトなど自国に少ない海外の資源、鉱山の権益までも購入していました。
つまり、中国は、車両電動化政策を打ち出す前に、電動化する前に電動化を達成した後の世界をシミュレーションし、そして資源が不足することもわかっており、不足するからできない、のではなく、だからこそ、車両電動化政策を進めると同時に、まだ価格の高騰していない資源を抑えてそこでもビジネスをする。そうすることで、エンジン技術を高めて成功した場合よりも、大きな国益になると考えたのではないでしょうか?決してエンジンの技術で追いつけないから諦めたのではないと思っています。
プロの目から見てどうですか?

<X>
ところどころひやかしますね!
まず、エンジンの技術はないわけでないですよ。もう自分達で作り始めて結構経ちますし、外国からも学んでますしね。
資源の話は過剰になっているところがあるので、もう少し冷静に見る必要はあるかなと思います。
過去に資源リスクと騒がれて本当に継続的な問題を引き起こした事例はないのではないでしょうか。
投資家をのぞけば、鉱山・材料・電池・自動車メーカーはものが流通して消費者に継続的に商品を届け安定的な事業をすることを望んでいると思います。
中国企業もグローバルに展開していこうと考えているでしょうし、奪い合いとかではなく建設的なマーケットのあるべき姿みたいなものを考えていく方が良いんじゃないかなと感じています。
ちなみに中国が安く資源手に入れているって事はないと思いますよ。リチウムに関して、昨年度なんか世界平均に対して2倍以上で流通してたんじゃないでしょうか。

<A>
電池メーカ、自動車メーカが鉱山を買うのは電池を作るための安くて安定した材料供給が目的だと思いますが、中国の場合、別な目的だったと思っています。投資です。自ら電動化宣言を行うことで、リチウム、コバルト、ニッケル資源の価値が上がることを見込み、先にそこに投資しておくことで、二次的に盛り上がるビジネスも先に抑えておく、という。完璧な戦略ではないでしょうか?

<X>
記事なんかでそういう視点がたまにありますが、違和感感じます。
資源の押さえ方って鉱山を押さえるだけでなくて色々方法はあります。自動車メーカーが鉱山を抑えなくても安定調達するすべはあります。また、国営企業だけでなく民間投資による購買も盛んです。
国の思惑や民間の考えなどが入り混じっていますので、政治的視点と経済的な視点をミックスしながら考える事が必要だと思います。
ご指摘の点は、そのような背景をごっちゃにすると本質が見えなくなって、出て来る情報に踊らされることになると思います。

今現在このように資源のニュースが盛り上がっているのは、電動車の販売計画が不明確なのが要因じゃないんじゃないかなと思っています。
このような状況では資源に限らず関係するマーケットが乱高下します。それでビジネスをする人達もいます。
ニュースはいちいち誰向けの情報なのかは書いてくれません。読む側が読み解いて利用していかないといけません。

因みに、現時点の中国では、電動車が売れるマーケットを中国政府主導で作られ、そこにビジネスチャンスを感じた人達が積極的に活動しているという感じが強い気がします。
投資が過剰であれば何処かに歪みが生じますし、適性であれば今後もさらに伸びるのではないでしょうか。
また、CATLのように中国国外に進出していくと中国政府の舵取りも複雑になって行きますね。

<A>
またまた変な方向に言ってしまいましたが、話を戻しますと、コメントいただく方から、過去の記事や対談は参考になり、現状多くの課題があることはわかったけど
「では、我々は今後どうしたらいいのでしょうか?」
って来てます。

<X>
そうですね。
電動化は、世の中でいわれているほど加速するかわかりませんが定着していきます。
電池などを対象に継続的に大きなお金が動いていくことは間違いないと思います。
それをビジネスチャンスとして技術を仕込む意味は十分にあると思います。
ただ、時間軸で考えることが必要だと思います。
結果を来年出したいのか、それとも10年後なのか。それによってやることは変わってくると思います。

もう少し具体的な話してたら今回の対談、終わっちゃいそうな質問ですね。

<A>
そうですね。じゃ、次回以降のネタにしましょう。
ただ、この手の話は相手が不特定多数だと難しいですよね。
適正な答えはその人の立場によっても異なるでしょうし。

<X>
そうですね。
最大公約数狙うとチープなことしか言えないですね。相手の背景とか狙いがわかると具体的になるんですけどね。

<A>
だから、対面形式のセミナーですよ!

<X>
粘りますね。

<A>
決定したんですよね?前回の対談も1000人以上がすでに見てますよ。

<X>
幼稚なやりとり1000人にみられているんですか??
もうちょっと品出したほうが良いですかね?

<A>
まっ手遅れですね。

【あの会社のエネルギーデバイスの投資について】
<A>
さて、今回の主題に入りましょう。
孫さんがLi資源と空気電池への投資発表しましたね。
率直にどうです?

<X>
電池技術の話じゃなくて投資の話になってしまいますが、面白いんじゃないかなと思います。
私の理解では、ソフトバンクはyahooの投資のころから、スタートアップであったり可能性のある会社への「投資者」でした。事業としてイノベーションを起こそうとする者の支援をしてきました。
今回の空気電池への投資は、スタートアップでなく「研究機関」への投資です。今までソフトバンクがやってきたことと質が異なります。現時点では全く商品のかたちがイメージ出来ません。
わかる人にはわかると思いますが、この投資案件はダイソンの全固体電池の投資の次元と似ています。

否定的というよりは肯定的にはとらえていて、会社として新しい試みへのチャレンジしているような気がするのでどのような方向に進んでいくのかわくわくします。この投資自体が成功するかどうかよりも、これに何か新たらしい流れができるかどうかに、個人的には着目しています。

<A>
IOTと組み合わせて新しい価値をって聞きましたが。

<X>
その価値を見出す動きは否定しませんし、何か新しい商品・サービスにつながる可能性があるので楽しそうだなって思います。
その場合、なんで空気電池?って思っちゃいます。
世の中に定着したLiイオン電池の方がいろいろ実証できて面白いと思うんですよね。
電池の使われ方とか知ることが重要だと思いますが、空気電池では形にできたとしても、システム上そういうこと精度よくできるのかな?なんて思っちゃいました。

<A>
私も同意見ですが、彼らには我々にない気付きがあって行動しているんだと思います。

<X>
そうですね。我々が頭固いんでしょうね。まだまだ勉強ですね。
トヨタのように、今回の投資も短絡的な自社の利益だけでなく日本のこと考えているんだと思います。

<A>
あっ、気づいちゃいました。
Xさんが全固体のブレイクスルーだといった活物質コートを考えたのNIMSですよ。
今回もNIMS!

<X>
そういうことだったんですね。さすが孫さん。

【空気電池のポテンシャル】
<A>
空気電池の技術論について話しましょう。
Xさんはどんなイメージですか?

<X>
車だと、簡単に表現すれば水素タンクがなくなったFCにような形になるんでしょうね。
エネ密が空気電池の価値であるっていう試算の多くは、構成されている集電体、活物質層、セパレータなどのスケールから試算したものかと思います。出力視点を加味したものを見たことがないです。
まず、実スケールでいうとLi酸化物が堆積しますのでそのスペースを考慮しないといけません。気体の通る流路も確保しないといけません。
FCベースで流路やポンプ、外装材量などなど加味して計算すると現状のLiイオン電池より大幅に上回っているとは言えないです。
耐久視点を加味すると、現在の延長では車両用とは難しいように思えます。

<A>
現状の話ですよね。

<X>
そうです。あくまで現状からの推測で、ブレイクスルーを起こしていけば可能性があります。

<A>
どういう視点で「課題」を設定すればいいんですかね?

<X>
ここでは話を簡単にするために、耐久や出入力は無視させてください。エネルギー密度の視点で。
発電部分だけに注目すればエネ密は高いが、周辺補器込でエネ密が低くなってしまうんであれば、価値を出すためには発電部分でだけではなく、補器やシステムでブレイクスルーを考えなければいけないんじゃないでしょうか?

<A>
自分の専門内で解決するんじゃなくて、達成したい目的に対して全体を俯瞰して重要度の高い「課題」を抽出したほうがいいよってことですね。

<X>
そうです。
発電部に着目した研究は無意味ではありませんが、そういったところのブレイクスルーが起きないと商品として昇華されることが難しいです。

<A>
多価イオン電池とか含めて、いわゆるPOST-LIBの話って記事にできますか?

<X>
やってみましょう。
ただ、書くのに時間かかりそうなので、少しお時間ください。

<A>
POST-LIBの記事書いてもらって、次に冒頭で議論した「何をやったらいいのか?」について書いてもらいましょう!

<X>
後者の方は、対面セミナーでってことじゃ?

<A>
自分から言いましたね。セミナー決定ですね!

<次回:Post-LIBについて>

【特別連載(寄稿) 第1回】「テスラから感じる世の中の電動化への見方」
http://lithiumion.info/myblog/?contribution_seriali=【特別連載(寄稿) 第一回】「テスラから感じ

【特別連載(寄稿) 第2回】「全固体電池の実際」
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【特別連載(別冊)】 第1回 対談
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【特別連載(寄稿) 第3回】「電池ロードマップの実際」
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【特別連載(別冊)】第2回 荒木ーX対談
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